「何回教えてもらっても覚えられない」
「利用者さんの名前と介助方法がごちゃごちゃになる」
「周りの職員は普通に動いているのに、自分だけ何をしていいか分からない」
介護職として働き始めたばかりの頃、こんなふうに悩む人はかなり多いです。
特に介護の仕事は、覚えることが多いです。
利用者さんの名前。
部屋番号。
食事形態。
排泄介助。
移乗方法。
服薬。
入浴。
申し送り。
記録。
一日の業務の流れ。
さらに、同じ利用者さんでも体調や時間帯によって対応が変わることがあります。
これを最初から全部覚えようとしたら、頭がいっぱいになるのは当然です。
現場で新人職員を見ていると、
「仕事が覚えられない=介護職に向いていない」
と考えてしまう人がいます。
でも、私はそうは思いません。
むしろ介護の新人さんには、
「全部覚えようとしないで、重要なことから順番に覚える」
ことのほうが大切です。
この記事では、
- 介護職の仕事がなかなか覚えられない理由
- 新人が最初に覚えたほうがいいこと
- 覚えやすくなるメモの取り方
- 仕事中に何を優先すればいいのか
- 教えてもらっても覚えられないときの対処法
について、できるだけ現場で使える形で話していきます。
「明日の勤務が少しだけ楽になりそう」
と思えるところまで持っていければ十分です。
介護職の仕事が覚えられないのは珍しいことじゃない
まず知っておいてほしいのは、
介護職の仕事を最初からスムーズに覚えられる人のほうが少ない
ということです。
なぜなら、介護は単純な作業の繰り返しではないからです。
たとえば「トイレ介助」と一言で言っても、
一人で歩ける人。
歩行器を使う人。
車いすの人。
立位だけ介助が必要な人。
二人介助の人。
パッド交換が必要な人。
尿器を使う人。
排泄記録が必要な人。
利用者さんごとにやり方が違います。
しかも、
「昨日は歩けたけど今日は体調が悪い」
ということもあります。
つまり新人さんは、
業務そのもの+利用者さんごとの個別対応
を同時に覚えているわけです。
これは普通に大変です。
だから、
「一週間たったのに覚えられない」
「一ヶ月なのにまだ聞いてしまう」
と必要以上に焦らなくて大丈夫です。
大切なのは、
昨日より一つでもできることが増えているか。
分からないことを確認できているか。
同じ危険なミスを繰り返していないか。
そこです。
まず「全部覚えよう」とするのをやめる
新人さんを見ていると、一番大変そうなのが、
全部を一気に覚えようとしている人
です。
たとえば初日に、
利用者さん30人の名前。
居室。
食事。
排泄。
移乗。
入浴曜日。
服薬。
これを全部メモしようとする。
当然、メモ帳は文字だらけになります。
そして翌日、
どこに何を書いたのか分からなくなる。
これは本人の記憶力が悪いわけじゃありません。
単純に情報量が多すぎます。
新人のうちは、
「何を覚えなくてはいけないか」を選ぶこと
が重要です。
私は、最初は大きく3段階に分けて覚えるのがいいと思っています。
最優先:事故につながること
まず最優先で覚えてほしいのは、安全に関わることです。
たとえば、
- 一人介助か二人介助か
- 移乗方法
- 転倒リスク
- 食事形態
- とろみの有無
- 禁食やアレルギー
- 服薬時の注意点
- 離床センサーなどの対応
ここは、
「分からなければ聞く」
で構いません。
むしろ、分からないのに自己判断するほうが危険です。
新人さんに求めたいのは、
何でも覚えていることではなく、
危険なことを勝手に判断しないこと
です。
次に覚える:一日の流れ
安全面の次は、自分の勤務帯の流れです。
たとえば早番なら、
出勤。
申し送り。
起床介助。
朝食。
排泄。
記録。
入浴。
昼食。
といった流れがあります。
最初は、
「9時に何をする」
という細かい時間より、
朝はこれ、昼前はこれ、午後はこれ
くらいで覚えても大丈夫です。
仕事の全体像が見えてくると、
「今、何をすればいいのか分からない」
という時間が減ってきます。
最後に細かい個別対応
利用者さんごとの、
好きな飲み物。
細かな生活習慣。
よくする会話。
居室の物品位置。
こうしたことは、後からでも大丈夫です。
もちろん重要ではあります。
でも、新人の最初の段階で全部覚えようとするとパンクします。
毎日関わっていれば、自然に覚えていくことも多いです。
新人介護職がまず覚えたい5つのこと
ここからは、もう少し具体的にいきます。
「結局、何から覚えればいいの?」
と思っている人は、まずこの5つを意識してみてください。
1.利用者さんの顔と名前
基本ですが、やはり大切です。
ただ、
一日で全員覚えなくても構いません。
最初は、
自分がよく介助に入る人。
自分の担当フロアの人。
食事介助に入る人。
など、関わる頻度の高い人から覚えます。
顔と名前が一致してくるだけで、仕事はかなり楽になります。
「あの人誰だっけ」
と毎回確認する時間が減るからです。
2.介助方法
次に大切なのが介助方法です。
特に、
移乗。
排泄。
食事。
入浴。
ここは安全に直結します。
「前の職場ではこうだった」
という経験があったとしても、自己判断しないほうがいいです。
利用者さんによって身体状況が違います。
新人のうちは、
「この方はどう介助しますか?」
と確認して大丈夫です。
3.その日の業務の流れ
介護職は時間で動くことが多いです。
食事。
服薬。
入浴。
排泄。
レクリエーション。
記録。
一日の流れが分かっていないと、
次に何をすればいいか分からなくなります。
逆に、
流れさえ分かれば、
「そろそろ昼食準備だな」
「このあと入浴だな」
と先読みできるようになります。
新人から一段成長するポイントは、
言われる前に次の仕事が分かるようになること
です。
でも、それは流れを覚えてからで十分です。
4.報告するべきこと
意外と大切なのがこれです。
新人さんは、
「こんなこと報告していいのかな」
と迷うことがあります。
でも最初は、
迷ったら報告で大丈夫です。
たとえば、
食事量がいつもより少ない。
元気がない。
転びそうになった。
皮膚に赤みがある。
排泄がいつもと違う。
利用者さんから体調不良の訴えがあった。
こうした変化は、先輩や看護職に伝えます。
介護職は、
何でも自分で解決する仕事じゃありません。
気づいたことをチームにつなぐこと
も大事な仕事です。
5.分からないときに誰に聞けばいいか
これも地味ですが重要です。
職場には、
リーダー。
主任。
教育担当。
先輩職員。
看護師。
ケアマネジャー。
いろいろな職種がいます。
新人のうちは、
「このことは誰に聞けばいいんだろう」
となりがちです。
まずは、
自分が困ったときに相談する人
を一人決めておくとかなり楽になります。
職場側も、新人が誰に聞けばいいか明確にしておくことが大切だと思います。
メモを取りすぎると逆に覚えられなくなる
「仕事を覚えるためにメモを取っています」
これはすごくいいことです。
ただし、
メモを取りすぎている人ほど、後で見返せない
ことがあります。
先輩が話す内容を全部書こうとして、
説明を聞けなくなってしまう人もいます。
メモは、
「あとで思い出すためのきっかけ」
くらいで大丈夫です。
悪い例
田中さんは朝起きたらトイレに行って、その後洗面して、右側に麻痺があるので左側から介助して……
これだと長すぎます。
シンプルにする
たとえば、
田中さん
朝:トイレ→洗面
右麻痺
移乗:左側介助
見守り必要
これくらいで十分です。
あとから見て、
「ああ、そうだった」
と思い出せればいいんです。
メモは「人別」と「業務別」を分ける
これはかなりおすすめです。
全部同じページに書くと、後から探せなくなります。
たとえば、
利用者さん別メモ
田中さん
- 車いす
- 移乗一人介助
- 右麻痺
- 食事刻み
- 水分とろみ
業務別メモ
早番
- 7:00 申し送り
- 起床介助
- 朝食準備
- 食後服薬
- 排泄
- 記録
こうして分けるだけで、かなり見やすくなります。
自分なりに、
マーク。
記号。
略語。
を決めてもいいです。
ただし、個人情報の扱いについては職場のルールに従ってください。
「一回教えたよね」で覚えられる人ばかりじゃない
新人教育でよくあるのが、
「前にも説明したよね」
という言葉です。
もちろん、何度も同じことを聞かれると、教える側が大変になることもあります。
ただ、
一度説明を受けただけで完全に覚えられる人は多くありません。
特に介護は、
説明を聞く。
実際に見る。
自分でやる。
振り返る。
この繰り返しで覚えていく仕事です。
だから新人さん自身も、
「一回で覚えられなかった」
と落ち込みすぎなくていいです。
その代わり、
同じ質問をするときは、
「前に聞いたんですが、ここだけ確認させてください」
と聞く。
メモを見てから質問する。
前回との違いを確認する。
こうすると、教える側にも、
「ちゃんと覚えようとしている」
ことが伝わります。
仕事を覚えるのが早い人がやっていること
記憶力が特別いいわけではないのに、仕事を覚えるのが早い人がいます。
そういう人を見ると、いくつか共通点があります。
分からないままにしない
一番大きいのはこれです。
なんとなく分かったふりをしない。
「ここだけもう一度教えてください」
と言える。
新人のうちは、これが一番大事です。
同じことを実際にやってみる
人は、聞いただけより自分でやったほうが覚えます。
たとえば移乗介助も、
見学だけ。
説明だけ。
では覚えにくいです。
先輩に見てもらいながら自分で介助する。
そのあと、
「今のやり方で大丈夫でしたか?」
と確認する。
この繰り返しが一番早いです。
勤務後に5分だけ振り返る
家に帰って何時間も勉強する必要はありません。
むしろ介護職は疲れます。
勤務後に、
今日覚えたこと。
分からなかったこと。
明日確認したいこと。
これだけ5分くらい整理する。
それでもかなり違います。
先輩みたいに動けないのは当たり前
新人さんがやりがちなのが、
ベテラン職員との比較です。
「あの人はナースコールが鳴る前に動いている」
「何も言われなくても全部分かっている」
「記録も早い」
当然です。
その人は何年もやっています。
利用者さんのことも知っています。
一日の流れも頭に入っています。
どこで時間がかかるかも分かっています。
新人さんが同じ動きをできるわけがありません。
ベテラン職員を見るなら、
「自分は遅い」
と比較するのではなく、
「どういう順番で動いているんだろう」
を見るほうが役に立ちます。
覚えられない原因が職場側にあることもある
ここも大事です。
仕事を覚えられないと、
新人本人の問題にされがちです。
でも、教育側の問題もあります。
教える人によって言うことが違う
Aさんには、
「こうして」
と言われる。
Bさんには、
「それ違うよ」
と言われる。
新人からすると、一番困ります。
介護は状況によって対応が変わることもありますが、
基本的な介助方法は職員間で統一されていたほうがいいです。
教える内容がバラバラなら、
新人が混乱するのは当然です。
毎日違う人から教わる
教育担当が決まっていない職場では、
毎日違う先輩について回ることがあります。
これも、新人にとっては覚えにくいです。
人によってやり方や説明方法が違うからです。
できれば最初のうちは、
教育担当者。
確認する人。
をある程度固定したほうが覚えやすくなります。
忙しすぎて誰も教える余裕がない
人手不足の現場では、
新人を教えたいけど教える時間がない。
ということもあります。
結果、
「とりあえず見て覚えて」
になってしまう。
でも、見ているだけでは分からないことも多いです。
もし、
質問する時間すらない。
放置される。
何も教えられていないのに怒られる。
という状態なら、
あなたが覚えるのが遅いのではなく、
教育環境に問題がある可能性もあります。
何ヶ月くらいで仕事を覚えればいい?
これは職場によってかなり違うので、
「○ヶ月で全部できなければ遅い」
という明確な答えはありません。
介護経験の有無でも変わります。
施設形態でも変わります。
利用者さんの人数でも変わります。
ただ、個人的には、
新人が最初から一人前に動けることを期待しすぎないほうがいいと思っています。
最初は、
利用者さんの名前が分かる。
介助方法が少し分かる。
勤務の流れが分かる。
一人でできることが増える。
それで十分です。
少しずつ、
「聞かなくてもできる仕事」
が増えていけばいいです。
それでも仕事が覚えられなくてつらいとき
努力している。
メモも取っている。
質問もしている。
何ヶ月も頑張っている。
それでも毎日仕事に行くのが苦痛。
そんな場合は、
一度働き方そのものを考えてもいいと思います。
ただ、
「覚えられないから介護職を辞める」
とすぐ決める必要はありません。
施設によって業務内容はかなり違います。
大規模な施設では覚える利用者さんが多くても、
小規模な施設なら少ない場合があります。
施設介護より、一対一で関わる働き方のほうが合う人もいます。
逆に、訪問介護よりチームで働く施設のほうが安心できる人もいます。
つまり、
介護職が合わないのではなく、今の職場の仕事量や教育方法が合っていない
こともあります。
新人を育てるのは、新人だけの責任じゃない
ここは管理する側としても大事だと思っています。
新人さんが、
「仕事を覚えられません」
と言ったとき、
本人だけに、
「もっと頑張って」
と言って終わらせるのは簡単です。
でも、
何を覚えるべきか明確になっているか。
マニュアルはあるか。
職員によって教え方が違っていないか。
質問できる雰囲気か。
新人を一人にしていないか。
教育する側も見直す必要があります。
新人が仕事を覚えられるかどうかは、
本人の努力だけでは決まりません。
教える側の環境も大きく影響します。
まとめ|介護職の仕事は「全部」ではなく「重要なことから」覚えればいい
介護職として働き始めると、
覚えることの多さに驚くと思います。
利用者さん。
介助方法。
食事。
排泄。
記録。
勤務の流れ。
全部を一気に覚えようとすると、頭がいっぱいになります。
だから最初は、
安全に関わること。
次に、
一日の流れ。
そのあとに、
細かい個別対応。
この順番で十分です。
そして、
分からないことは聞く。
メモは短くする。
一日一つでも覚える。
昨日よりできることが一つ増えれば、それでいいです。
先輩と同じスピードで動けなくても問題ありません。
その人にも新人だった時期があります。
もし今、
「仕事を覚えられないから介護職に向いてない」
と思っているなら、そこまで急いで結論を出さなくて大丈夫です。
あなたが覚えるのが遅いのか。
単純に覚えることが多すぎるのか。
職場の教育体制に問題があるのか。
一度分けて考えてみてください。
介護の仕事は、
昨日できなかったことが、ある日普通にできるようになる仕事
でもあります。
焦らず、一つずつで大丈夫です。