「自分、介護職に向いてないのかもしれない」
介護の仕事をしていると、一度くらいはそう思うことがあります。
利用者さんにイライラしてしまった。
何度教えてもらっても仕事を覚えられない。
先輩みたいにテキパキ動けない。
ミスをして落ち込んだ。
夜勤がきつすぎる。
排泄介助や入浴介助が思っていた以上に大変だった。
そんなときに、
「介護職を続けていていいのかな」
「自分にはもっと別の仕事があるんじゃないか」
と考えるのは珍しいことじゃありません。
でも、現場で職員を見ていると感じることがあります。
「介護職に向いていない」と思っている人の中には、介護そのものではなく、今の職場や働き方が合っていない人がかなりいるということです。
もちろん、介護以外の仕事を選ぶのも一つの道です。
無理に介護職を続ける必要はありません。
ただ、一つの施設でうまくいかなかっただけで、
「自分は介護に向いてない」
と決めてしまうのは、少しもったいないこともあります。
この記事では、介護現場で職員を見てきた立場から、
「介護職に向いてない」と感じやすい瞬間、本当に向いていないのか判断するポイント、職場を変えることで解決できるケースについて話していきます。
「介護職に向いてない」と感じるのは珍しいことじゃない
最初に伝えておきたいのは、
介護職に向いてないかも、と悩むこと自体はまったく珍しくない
ということです。
むしろ、真面目に仕事をしている人ほど悩むことがあります。
介護職は、正解が一つじゃない仕事です。
たとえば認知症のある利用者さんへの声かけ。
同じ言葉を使っても、うまくいく日といかない日があります。
昨日できた介助が今日はうまくいかないこともあります。
利用者さんの体調や気分によっても変わります。
さらに介護職は、
食事介助。
排泄介助。
入浴介助。
移乗。
服薬確認。
記録。
ナースコール。
ご家族対応。
他職種との連携。
覚えることもかなり多い仕事です。
新人の頃は、利用者さんの名前を覚えるだけでも大変なのに、
「この方はトイレ誘導」
「この方は移乗二人介助」
「この方は食事形態が違う」
と、一人ひとりの情報まで覚えなければいけません。
最初から全部できる人なんて、ほとんどいません。
それでも周囲にベテラン職員がいると、
「あの人は普通にできているのに、自分だけできない」
と感じてしまいます。
でも、その先輩も最初からできていたわけじゃありません。
経験を積んだからできるようになっただけです。
だから、仕事がまだうまくできないことと、
介護職に向いていないことは別です。
こんな理由で「向いてない」と決めなくてもいい
介護職を辞めようか悩んでいる人の中には、
「それだけで向いてないと判断しなくてもいいのに」
と思うケースがあります。
利用者さんにイライラしてしまう
介護職なら、利用者さんにいつでも優しくできなければいけない。
そう思っている人は多いです。
もちろん、利用者さんに感情をぶつけたり、不適切な対応をしたりしていいわけじゃありません。
でも、
イライラする感情そのものまでなくすことはできません。
同じことを何度も聞かれる。
ナースコールが何度も鳴る。
介助拒否が続く。
時間がないときに対応が重なる。
そんな状況なら、誰だって余裕を失うことがあります。
むしろ考えてほしいのは、
「なぜこんなにイライラしているんだろう」
ということです。
睡眠不足なのか。
人手不足なのか。
休憩が取れていないのか。
業務量が多すぎるのか。
職場の人間関係でも疲れているのか。
利用者さんへの感情より先に、自分の余裕がなくなっているケースは本当に多いです。
仕事を覚えるのが遅い
新人職員からよく聞くのが、
「なかなか仕事を覚えられません」
という悩みです。
でも介護の仕事は、覚えることが多いです。
しかも、ただ暗記すればいい仕事でもありません。
利用者さんごとに介助方法が違い、状況に合わせて判断する必要があります。
一度説明を聞いただけで全部覚えるほうが難しいです。
メモを取る。
分からないことを確認する。
同じ失敗を繰り返さないようにする。
少しずつできることを増やしていけば十分です。
それなのに、
一度教えただけで、
「前に言ったよね?」
と責める職場もあります。
その場合は、本人の能力ではなく、
教育する側の仕組みに問題がある可能性もあります。
ミスをしてしまった
介護職はミスが怖い仕事です。
転倒。
誤薬。
確認漏れ。
記録ミス。
一つの失敗で強く落ち込む人もいます。
でも、ミスをしたから向いていないとは限りません。
むしろ大事なのは、
なぜ起きたのか。
どうすれば防げるのか。
次はどうするのか。
そこを考えることです。
もちろん重大な事故を軽く考えていいわけじゃありません。
ただ、ミスをした人を責めるだけでは、同じことが繰り返されます。
人員配置。
業務の流れ。
確認方法。
情報共有。
環境側に原因があることも少なくありません。
排泄介助や入浴介助が苦手
「排泄介助がどうしても苦手」
「入浴介助がしんどい」
という人もいます。
これも、それだけで介護職に向いていないとは言えません。
介護職の働き方は施設によってかなり違います。
特別養護老人ホームとデイサービスでは仕事内容が違います。
訪問介護と有料老人ホームでも違います。
介護業界には、
身体介護が多い職場。
レクリエーション中心の職場。
生活支援が中心の職場。
一対一で関わる仕事。
いろいろあります。
一つの仕事が苦手だからといって、介護のすべてが向いていないとは限りません。
介護職に向いている人は「優しい人」だけじゃない
介護職に向いている人というと、
「優しい人」
を思い浮かべるかもしれません。
もちろん優しさは大切です。
でも、現場では優しいだけでは難しい場面もあります。
むしろ介護職として働くうえでは、いろいろなタイプの人が活躍できます。
人の変化に気づける人
昨日より食事量が少ない。
いつもより元気がない。
歩き方が少し違う。
会話の様子がおかしい。
こうした小さな変化に気づけることは、介護では大きな強みです。
介護職は、利用者さんと長い時間を過ごします。
そのため、看護師や医師より先に変化に気づくこともあります。
分からないことを聞ける人
新人の頃に一番大切なのは、
何でもできることではありません。
分からないことを、そのままにしないことです。
「多分これでいいだろう」
と自己判断するより、
「ここが分からないので教えてください」
と言える人のほうが安心です。
質問することを恥ずかしいと思う必要はありません。
分からないまま介助するほうが危険です。
感情を引きずりすぎない人
介護現場では、うまくいかないこともあります。
利用者さんから強い言葉を言われることもあります。
ご家族から厳しい意見を受けることもあります。
そのたびに全部自分の責任だと思っていると、かなり疲れます。
「今日は大変だったな」
とある程度切り替えられることも大切です。
これは冷たいという意味じゃありません。
介護の仕事を長く続けるためには、
仕事と自分の生活を分ける力も必要です。
本当に「介護職が向いてない」可能性があるケース
一方で、
介護職を無理に続けなくてもいいケースもあります。
どんな仕事にも向き不向きはあります。
介護だけ特別ではありません。
人と関わること自体が強いストレスになる
介護は、人と関わる時間が非常に長い仕事です。
利用者さん。
ご家族。
同僚。
看護師。
ケアマネジャー。
生活相談員。
多くの人とコミュニケーションを取ります。
人と関わることそのものが毎日強い苦痛になっているなら、別の仕事のほうが合っている可能性もあります。
介助そのものがどうしても苦痛
排泄介助。
入浴介助。
食事介助。
身体に触れる介助。
こうした仕事にどうしても強い抵抗があり、時間が経っても慣れない場合があります。
もちろん施設形態を変えることで減らすことはできます。
ただ、介護職として働く以上、完全に人の生活支援から離れるのは難しいです。
それ自体が強いストレスなら、介護以外の仕事を考えてもいいと思います。
高齢者と関わることにまったく興味を持てない
介護職は、高齢者の生活を支える仕事です。
必ずしも、
「高齢者が大好き!」
である必要はありません。
そこまで強い気持ちを持っていなくても、普通に働いている人はたくさんいます。
ただ、
利用者さんの生活にまったく興味がない。
話を聞くことが苦痛。
支援する意味を感じない。
という状態なら、仕事そのものが合っていない可能性があります。
その場合は、介護以外に目を向けることも悪いことじゃありません。
「介護が向いてない」のではなく「今の職場が向いてない」こともある
ここはかなり大事です。
介護職に向いてないと思ったとき、
介護という仕事と、今働いている職場を分けて考えてください。
たとえば、
介護は嫌いじゃない。
利用者さんとの会話も好き。
仕事にやりがいも感じる。
でも、
人間関係が最悪。
夜勤が多すぎる。
休みが取れない。
人手不足。
上司が話を聞いてくれない。
サービス残業が多い。
こういう場合、
「介護職に向いていない」のではなく、
その職場に向いていないだけ
かもしれません。
これはかなり違います。
同じ介護職でも、施設が変わると働き方は大きく変わります。
特養が合わなくても介護が合わないとは限らない
特別養護老人ホームでは、比較的介護度の高い方が多く、身体介護も多くなりやすいです。
そこで身体的にきついと感じても、
デイサービス。
訪問介護。
サービス付き高齢者向け住宅。
有料老人ホーム。
などでは、働き方が違うことがあります。
逆に、
「大人数の職場が苦手」
という人なら、訪問介護のような一対一の支援が合うこともあります。
施設形態によって向き不向きは変わります。
夜勤が合わないだけかもしれない
夜勤が苦手だから、
「介護職は無理」
と思っている人もいます。
でも介護職には、夜勤のない職場もあります。
デイサービスなど、基本的に日中勤務が中心の仕事もあります。
夜勤で生活リズムが崩れているなら、
介護そのものではなく、
働く時間帯が合っていない可能性があります。
管理者や職場文化の影響も大きい
同じ法人でも、施設長や管理者が変わるだけで職場の雰囲気が変わることがあります。
相談しやすい管理者。
失敗を一緒に考える管理者。
職員同士で助け合う職場。
逆に、
ミスした人を責める。
陰口が多い。
質問しづらい。
休みを取りづらい。
そんな職場もあります。
だから、一つの職場だけで
「介護職が向いてない」
と結論を出さなくてもいいと思います。
介護職を辞める前に一度だけ考えてみてほしいこと
もし今、
「もう介護を辞めようかな」
と思っているなら、一度だけ整理してみてください。
紙でもスマホのメモでも構いません。
「介護職の何が嫌なのか」
を書き出してみます。
たとえば、
夜勤。
給料。
人間関係。
身体的負担。
利用者対応。
家族対応。
上司。
人手不足。
勤務時間。
仕事内容そのもの。
そして一つずつ、
「職場を変えれば解決するか」
を考えてみます。
もし、
夜勤。
給料。
人間関係。
人手不足。
などが主な原因なら、職場を変えることで改善する可能性があります。
一方で、
介護業務そのものが苦痛。
人と関わること自体が嫌。
介護にまったく興味を持てない。
という場合は、介護以外の仕事を探してみるのもいいでしょう。
大切なのは、
「向いてないから辞める」ではなく、「何が合っていないのか」を知ることです。
他の職場を見てから介護を辞めても遅くない
今の職場がつらいと、
「介護業界って全部こんな感じなのかな」
と思ってしまいます。
でも、実際にはかなり違います。
給料。
夜勤回数。
年間休日。
職員配置。
施設形態。
教育体制。
人間関係。
同じ介護職でも環境はさまざまです。
だから、介護業界そのものを辞める前に、
一度だけ他の職場を見てみる
という方法もあります。
求人を見るだけでも構いません。
転職するかどうかは、そのあと決めればいいです。
今より条件のいい職場があるか。
夜勤なしの求人はあるか。
自分の経験ならどれくらいの給与になるのか。
そうしたことを知るだけでも、
「介護を辞めたい」のか、
「今の職場を辞めたい」のか、
見えてくることがあります。
転職活動を始めたからといって、必ず転職しなければいけないわけじゃありません。
今の職場に残るという判断をしてもいいんです。
比較したうえで残るなら、それも一つの答えです。
まとめ|介護職に向いてないと決める前に「何が合わないのか」を考えよう
「介護職に向いてないかも」
そう思ったからといって、本当に介護が向いていないとは限りません。
仕事を覚えるのが遅い。
ミスをした。
利用者さんにイライラした。
夜勤がつらい。
身体がきつい。
こうした理由だけで、
「自分には介護が向いてない」
と決めなくても大丈夫です。
介護職は、慣れるまで時間のかかる仕事です。
そして同じ介護職でも、働く場所によって仕事内容や環境はかなり違います。
もしかすると、
あなたに向いていないのは介護ではなく、
今の職場や今の働き方なのかもしれません。
もちろん、考えた結果、
「やっぱり介護以外の仕事をしたい」
と思うなら、それも一つの選択です。
仕事は介護だけじゃありません。
ただ、
一つの職場でつらかったことだけを理由に、
自分には介護の仕事ができないと決めつける必要もありません。
介護を続ける。
施設を変える。
夜勤のない働き方に変える。
介護業界を離れる。
どの道を選ぶにしても、
まずは、
「自分は何がつらくて、何なら続けられそうなのか」
を考えてみてください。
「向いてる」「向いてない」の二択で決めなくてもいいんです。
自分に合う働き方を探すことも、立派な選択だと思います。