「もう介護職を辞めたい」
そう思ったあとに、
「でも、これくらいで辞めたら甘えなのかな」
「みんな大変なのに、自分だけ弱いんじゃないか」
そんなふうに自分を責めてしまう人は少なくありません。
介護の仕事って、不思議なくらい「つらくても頑張ること」が美徳になりやすい仕事です。
人手が足りない。
利用者さんを置いていけない。
自分が休むと他の職員に迷惑がかかる。
そんな理由から、かなりしんどい状態になっていても働き続けてしまう人を、私は現場で何人も見てきました。
でも、介護職を辞めたいと思うこと自体は、甘えじゃありません。
大切なのは、
「介護の仕事そのものが嫌なのか」
それとも、
「今の職場で働き続けるのがつらいのか」
を分けて考えることです。
この2つは似ているようで、まったく違います。
今の職場が合っていないだけなのに、「自分は介護に向いていない」と決めつけて介護業界そのものを辞めてしまう人もいます。
逆に、心身ともに限界なのに「まだ頑張れる」と無理を続けてしまう人もいます。
この記事では、現場で職員の働き方や退職相談を見てきた立場から、
- 介護職を辞めたいと思うのは甘えなのか
- 本当に限界が近いときに出やすいサイン
- 辞める前に考えてほしいこと
- 今の職場を離れたほうがいいケース
について、できるだけ現実的に話していきます。
介護職を辞めたいと思うのは甘えじゃない
最初に結論から言うと、
介護職を辞めたいと思うことは、甘えではありません。
そもそも、人が「辞めたい」と思うのには理由があります。
疲れた。
人間関係がしんどい。
給料が低い。
夜勤がきつい。
休みが取れない。
利用者さんへの対応で精神的に消耗する。
上司に相談しても何も変わらない。
理由は人それぞれですが、何もないのに突然「辞めたい」と思う人はほとんどいません。
介護現場では、つらさを我慢している人ほど、
「まだ自分は大丈夫」
「もっと大変な人もいる」
と考えがちです。
でも、他人のつらさと自分のつらさを比べても、あまり意味はありません。
同じ夜勤回数でも平気な人もいれば、生活リズムが崩れて体調を崩す人もいます。
同じ上司のもとでも気にならない人もいれば、毎日強いストレスを感じる人もいます。
人によって耐えられる環境は違います。
だから、
「周りも頑張っているから」
という理由だけで、自分まで無理を続ける必要はありません。
むしろ怖いのは、
「辞めたい」と思っているのに、その気持ちを無視し続けることです。
「介護を辞めたい」のか「この職場を辞めたい」のかを分けて考える
介護職を辞めたいと思ったとき、まず考えてほしいことがあります。
それは、
介護そのものを辞めたいのか、それとも今の職場を辞めたいのか
ということです。
ここを混ぜて考えてしまう人は本当に多いです。
たとえば、
利用者さんと話すことは嫌いじゃない。
介助することにも抵抗はない。
高齢者と関わる仕事にはやりがいを感じている。
でも、
職場の人間関係が最悪。
毎月のように誰かが辞める。
夜勤回数が多すぎる。
希望休が通らない。
上司に相談しても何も変わらない。
こういうケースなら、
「介護職が向いていない」
というより、
今の職場が合っていない可能性があります。
同じ介護職でも、職場によって働き方はかなり違います。
特養。
老健。
有料老人ホーム。
サービス付き高齢者向け住宅。
グループホーム。
デイサービス。
訪問介護。
施設形態が違えば、仕事内容も職員配置も夜勤の有無も違います。
同じ施設形態でも、運営法人や管理者が変われば職場の雰囲気はかなり変わります。
だから、一つの職場が合わなかったからといって、
「介護職そのものが向いていない」
と決めるのは少し早いです。
介護職を辞めたほうがいい?限界を感じたときの7つのサイン
では、どんな状態になったら「少し休んだほうがいい」「職場を変えたほうがいい」と考えるべきなのでしょうか。
もちろん明確な線引きがあるわけではありません。
ただ、現場を見ていると、限界に近づいている人にはいくつか共通した変化があります。
仕事の日になると体調が悪くなる
出勤日の朝になると、
頭が痛い。
お腹が痛い。
吐き気がする。
動悸がする。
身体が異常に重く感じる。
こうした状態が続いているなら、単なる「仕事に行きたくない」では済まないことがあります。
特に、
休日は比較的元気なのに、仕事の日だけ体調が悪くなる。
職場に近づくにつれて気分が悪くなる。
そんな状態なら、身体がかなり強いストレスを感じている可能性があります。
介護職は身体を使う仕事なので、
「疲れているだけ」
と考えてしまいがちです。
でも、身体の疲労と精神的な疲労が同時に続くと、一気にしんどくなることがあります。
無理を続けるより、一度立ち止まって今の働き方を見直したほうがいい状態です。
利用者さんに優しくできなくなった
これは、介護職本人が一番つらく感じる変化かもしれません。
以前なら気にならなかったことにイライラする。
同じ話を何度もされると腹が立つ。
ナースコールが鳴るだけで嫌な気分になる。
介助を頼まれると、
「またか……」
と思ってしまう。
こうなると、
「自分は介護職に向いていない」
と責めてしまう人がいます。
でも、必ずしもそうとは限りません。
単純に、余裕がなくなっていることがあります。
人は余裕がなくなるほど、他人に優しくすることが難しくなります。
特に介護現場では、
人手不足。
時間不足。
残業。
連続勤務。
こうしたものが重なると、普段なら普通にできていたことまで負担になります。
「利用者さんに優しくできない自分は最低だ」
と責める前に、
なぜそこまで余裕がなくなっているのか
を考えてみてください。
休日も仕事のことばかり考えてしまう
せっかくの休みなのに、
明日の勤務を考えて憂うつになる。
職場の人間関係を思い出す。
仕事でミスしていないか不安になる。
休日に職場から電話が来るんじゃないかと気になる。
こんな状態になると、休んでいるようで休めていません。
本来、休日は仕事から離れる時間です。
もちろん責任のある仕事なら、多少考えてしまうことはあります。
でも、
朝から晩まで仕事のことが頭から離れない。
眠る前まで仕事のことを考えている。
そんな状態が続いているなら、かなり疲れている可能性があります。
私は、介護の仕事を長く続けるには、
勤務中に頑張ることと同じくらい、仕事から離れる時間を作ることも大事
だと思っています。
職場に相談しても何も変わらない
仕事がつらくなったとき、
上司に相談する。
勤務を調整してもらう。
配置を変えてもらう。
業務分担を見直す。
こうしたことで改善するケースもあります。
だから、辞める前に一度相談してみることには意味があります。
ただし、
何度相談しても何も変わらない。
「みんな大変だから」と言われるだけ。
「もう少し頑張って」と先延ばしにされる。
相談したことで逆に責められる。
そんな職場なら、話は変わってきます。
管理者側にも、すぐに解決できない事情があることはあります。
人員配置や勤務表など、簡単には変えられないこともあります。
でも、
相談を聞くことと、何もせず放置することは別です。
職員が限界だと言っているのに、何の対応もない職場なら、
「自分が我慢するしかない」
と考え続ける必要はありません。
人が辞めるたびに負担が増えている
介護現場では、
「一人辞める」
という影響がかなり大きいです。
一人減る。
残った職員の夜勤が増える。
休みが取りにくくなる。
残業が増える。
疲れてまた誰かが辞める。
さらに人手不足になる。
こういう悪循環に入ってしまう施設があります。
問題なのは、
「今だけ忙しい」
のか、
ずっと同じ状態が続いている
のかです。
一時的な人手不足なら、採用や異動で改善する可能性があります。
でも、
半年たっても変わらない。
一年たっても変わらない。
むしろさらに人が減っている。
という状態なら、今後も改善しない可能性があります。
そこで頑張り続けることが、本当に自分にとっていいことなのかは考えたほうがいいです。
「事故が起きそう」と感じるほど余裕がない
これはかなり重要なサインです。
人手が足りず、
コール対応が追いつかない。
見守りが十分できない。
急いで介助しなければならない。
記録を書く時間がない。
そんな状態が続いていると、事故のリスクも高くなります。
転倒。
誤薬。
移乗時の事故。
確認不足。
介護は、人の生活や安全に直接関わる仕事です。
だからこそ、
「気合いで何とかする」
では済まない部分があります。
自分でも、
「このままではいつか大きなミスをしそう」
と感じているなら、その感覚は無視しないほうがいいです。
事故が起きてから後悔しても遅いことがあります。
「明日もこの職場に行く」と考えるだけで絶望する
辞めたいと思う日は誰にでもあります。
嫌なことがあった日。
忙しかった日。
苦手な職員と勤務が重なった日。
そんな日に、
「もう辞めたい!」
と思うのは珍しくありません。
でも、
何週間も。
何ヶ月も。
毎日のように、
「明日もここに行かなきゃいけないのか」
と絶望する。
それは、かなり大きなサインです。
仕事には多少の我慢も必要です。
でも、
毎日を削りながら続けることまで「社会人だから」と正当化する必要はありません。
仕事は生活の一部です。
仕事のために生活全体が崩れているなら、働き方を見直していいと思います。
介護職を辞める前に一度だけ確認してほしいこと
ここまで読んで、
「やっぱり辞めたほうがいいのかな」
と思った人もいるかもしれません。
ただ、感情が一番強くなっている日に、そのまま退職届を出すことはおすすめしません。
辞める前に、一度だけ整理してみてください。
今つらい原因を一つずつ書き出す
「介護職が嫌」
だけではなく、
何が嫌なのかを細かく考えてみます。
たとえば、
人間関係。
夜勤。
給料。
残業。
人手不足。
上司。
身体的負担。
利用者対応。
これを分けるだけでも、少し見え方が変わります。
もし原因が、
「夜勤がつらい」
なら、夜勤のない職場に変える方法があります。
「特養の身体介護がきつい」
なら、デイサービスや訪問系など別の働き方もあります。
「今の上司と合わない」
なら、介護そのものを辞めなくてもいいかもしれません。
原因を具体的にすることで、
「辞めるしかない」
以外の選択肢が見えることがあります。
異動や勤務変更で改善できないか考える
大きな法人であれば、
別施設への異動。
フロア変更。
夜勤回数の調整。
勤務時間の変更。
といった選択肢が取れることもあります。
転職する前に改善できるのであれば、それも一つの方法です。
特に、
仕事内容は好き。
利用者さんとの関係も悪くない。
でも今の部署だけがしんどい。
という人なら、一度相談する価値はあります。
他の職場を見てから決めてもいい
退職するかどうか迷っている人に、私が一番おすすめしたいのは、
今の職場に在籍したまま、他の職場を見てみること
です。
転職すると決めていなくても構いません。
求人を見る。
給料を見る。
勤務条件を見る。
他の施設の話を聞いてみる。
それだけでも、
「今の職場って普通だったんだ」
と分かることもあれば、
逆に、
「自分が我慢しすぎていたんだ」
と気づくこともあります。
比較するものが今の職場しかないと、その環境が普通なのかどうか分からなくなります。
特に同じ施設で長く働いている人ほど、
「介護業界って全部こんなもの」
と思っていることがあります。
でも、実際にはかなり違います。
逆に、すぐ辞めなくてもいいケースもある
ここまで「無理をしないで」という話をしてきましたが、辞めたいと思ったら必ず転職すればいいわけでもありません。
一時的にしんどいだけのケースもあります。
たとえば、
新しいフロアに異動したばかり。
新人でまだ仕事に慣れていない。
人員不足が一時的に起きている。
苦手な職員が異動予定になっている。
勤務調整で改善できそう。
こうした場合は、少し時間を置くことで楽になることもあります。
介護職は、慣れるまで大変な仕事です。
特に新人の頃は、
利用者さんの名前。
ADL。
介助方法。
服薬。
食事形態。
排泄。
記録。
職員の名前。
覚えることが本当に多いです。
最初から全部できる人なんて、ほとんどいません。
だから、
「仕事ができないから辞めたい」
という理由なら、もう少し時間をかけてもいいケースがあります。
ただし、
怒鳴られる。
無視される。
教えてもらえない。
質問すると嫌な顔をされる。
新人を放置する。
という職場環境なら話は別です。
それは「新人だから大変」なのではなく、
教育体制に問題がある可能性があります。
「辞めたら迷惑がかかる」と考えすぎなくていい
退職を考える介護職から、本当によく聞く言葉があります。
「自分が辞めたら、他の職員に迷惑がかかりますよね」
その気持ちは分かります。
実際、一人辞めれば勤務表の調整が必要になります。
夜勤の回数が変わることもあります。
でも、
それを理由に退職できないとなると、
誰も辞められなくなります。
職員が退職しても運営できる体制を作るのは、本来、個人の責任ではありません。
採用。
人員配置。
勤務調整。
これは組織側が考えることです。
もちろん、
「明日から来ません」
のような辞め方は、できるだけ避けたほうがいいです。
でも、ルールに沿って退職するのであれば、
必要以上に罪悪感を持たなくて大丈夫です。
むしろ、
自分が限界になるまで残り続ける。
体調を崩す。
突然出勤できなくなる。
そうなるほうが、本人にとっても職場にとっても大変です。
介護を辞めなくても、職場を変えるだけで楽になることはある
介護職の退職相談を見ていると、
「介護が嫌になった」
と言っていた人が、転職後も普通に介護の仕事を続けていることがあります。
なぜか。
介護が嫌だったのではなく、
その職場で働くことに疲れていた
からです。
人間関係が変わった。
夜勤回数が減った。
通勤時間が短くなった。
給料が上がった。
希望休が通るようになった。
上司が話を聞いてくれるようになった。
こうしたことだけで、
仕事への感じ方が大きく変わることがあります。
もちろん、転職すれば必ず幸せになるわけじゃありません。
新しい職場にも、新しい悩みは出てきます。
だからこそ、
求人票だけで決めず、
自分が今何に悩んでいるのかを整理したうえで職場を選ぶことが大切です。
夜勤が嫌なのに、夜勤回数の多い施設へ行ったら意味がありません。
人間関係に悩んでいるなら、離職率や職場の雰囲気も確認したいところです。
給料が不満なら、基本給だけでなく、
夜勤手当。
資格手当。
処遇改善。
賞与。
年間休日。
まで確認したほうがいいです。
転職は、
「今の職場から逃げること」
じゃありません。
自分が働き続けられる環境を探すこと
だと考えてみてください。
辞めるか迷っているなら、まず他の職場を知るだけでもいい
「辞めたいけど、本当に転職していいのか分からない」
という人は、
いきなり退職する必要はありません。
まず、
他にどんな求人があるのか。
今より条件のいい職場はあるのか。
自分の経験ならどれくらいの給与になるのか。
それを知るだけでも十分です。
介護職の転職サービスには、求人を見るだけでなく、
希望条件を伝えて求人を探してもらえるものもあります。
今の職場しか知らない状態で悩み続けるより、
比較できる職場を一つでも知っておいたほうが判断しやすくなります。
転職するかどうかは、そのあと決めればいいです。
私は、
「つらいならすぐ辞めよう」
とも、
「介護職なんだから我慢しよう」
とも思いません。
一番大切なのは、
自分が壊れるまで働かないことです。
まとめ|介護職を辞めたいと思ったら「甘えかどうか」より原因を考えよう
介護職を辞めたいと思うことは、甘えではありません。
大切なのは、
「辞めたいと思っている自分は弱い」
と責めることではなく、
なぜ辞めたいと思っているのか
を整理することです。
介護そのものが嫌なのか。
今の職場が嫌なのか。
夜勤がつらいのか。
人間関係なのか。
給料なのか。
人手不足なのか。
原因が分かれば、取れる選択肢も変わります。
そして、
介護は好きだけど今の職場がつらい。
そう感じているのであれば、
介護職そのものを辞める前に、一度ほかの職場を見てみてもいいと思います。
介護業界は、職場によって働きやすさが本当に違います。
今いる場所が、介護業界のすべてじゃありません。
「ここで頑張れないなら、どこへ行っても同じ」
という言葉を聞くこともありますが、私はそうは思いません。
場所が変わっただけで、驚くほど働きやすくなる人もいます。
だから、
もう少し頑張る。
異動を相談する。
勤務を変える。
別の施設を探す。
介護職そのものを辞める。
どれを選んでも構いません。
ただ一つだけ、
限界を超えるまで我慢することだけは、選ばなくていいです。